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「渡し」

僕の底に横たわる 苔のような憂鬱よ

朝霧煙る静けさに 両の目を閉じました

 

忘れた事すら忘れたよ

どうしようもない様な出来事が起こるのを

人知れず待ち侘びた

青過ぎる凪に浸って

 

その日暮らし 進む遊覧船 悪い夢に食べられても

懐かしい匂いを背に 騒がしい街を擦り抜けて

 

寂しさよ 君がいれば安心したよ

 

見渡したら 皺の増えた顔 やがて対岸に手を振る

愛しくて 名残惜しい それすらもいつか忘れるだろうか

 

寂しさよ 君がいれば安心したよ

僕たちの間にあったのは本当だよ

 

いずれ消え去る君と僕だ

さよならだけが人生だ

寄せては返す 波間に揺れて

苔のむすまで酌み交わそうぜ

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